ウォーキン・ダウン・ザ・ストリート



次はいつ会う?だとか、・・・会いたいだとか、
こんなフレーズを、心の隅で期待しちゃってるわたしは死んじゃえばいい。そして今純粋にわたしは怒っている。跡部はそんなわたしを知っているくせに知らんふり。まったくポーカーフェイスなんて、クソくらえだ。





「だからウゼぇんだよ彼氏彼女とか」

公園のベンチに腰掛けて意識を遠くかなたに飛ばしていたわたしを思い切りすごい力で現実に引き戻した跡部は、わたしを傷つけただけじゃまだ足りないらしく腕組みをしていた。





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ピシャリとした物言いに縮こまりながら盗み見た彼の横顔は、うつくしかった。わたしは舐めていたノド飴をガリリと噛んで飲み込む。そして最後のお別れの言葉を言うべく息を吸った。・・・ノドが、すうすうする。






「跡部は人を好きになれないクセに」


「は?」




「跡部が1番好きなの、結局自分じゃん」

「自分しか好きになれないくせに彼氏彼女とか無理じゃん」





「・・・究極うぜえ」




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「じゃ、あたし帰るから」



俺の前からさっさと消えろよとか言われたら、さすがにたまったもんじゃないから、わたしはマフラーを巻き直して跡部に背をむけた。くるり。不意にわたしの目に映り込んできた街路樹のイルミネーション。きれいすぎて今のわたしには不快感しか、もたらさない。だから無視して、歩き出す。わたしも相当ツイてない。クリスマスは結局独り身だ。でも跡部はきっとわたしみたいにはならない。絶対にどっかで新しい彼女調達して、そんで、は?お前らは家族でクリスマスか?そりゃめでてーよ。なんて、テニス部の彼女いない子とかにそういうこと言うんだ。平気で。ひどい。

わたしは溜め息を1つこぼして、もう戻らない人のことを考えるのを止めた。ポケットに突っ込んでるくせに、わたしの両手は酷く冷たい。



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「言い逃げすんな!」




急に背後から怒鳴り声が聞こえて、控えめに振り返ったら、紛れもなく、鬼の形相の跡部が見えた。どうして居るの、そう聞く前に、跡部の怒りのオーラがわたしにはクッキリと見えた。だからわたしは本能で身の危険を察して、反射的にダッシュで走り出した。





「おいコラ!逃げんなバカ!」





もってる力を振り絞って駆ける。ロマンチックな電飾が光の筋になってわたしの視界の隅を掠めていく速さ。



「ほんとお前めんどくせえんだよ」




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勢い良くコートの襟を捉まれて思わず息が一瞬止まる。ぐい、引き寄せられて、どすん。公園のベンチに座らされた。でも跡部はわたしの隣には決して腰掛けない。わかってる、跡部は立ったままだ。何故って、それはわたしを見下ろすためだ。向かい合って立っていても明らかに跡部の方がわたしよりも背が高いのに、こうやってわたしが座って、向こうが立っているとその身長差は凄まじく、威圧感も、ケタ違いだ。


ボヤけた街灯の光で暗やみに微かに浮かび上がる跡部の顔のパーツは遠くからみてもなお息を飲むくらいに整っていた。今さらな話だけど。もうわたしのじゃないけど。ていうか、最初からわたしのものじゃなかったけど。




「俺にだって言いたいこと言わせろ、」

「 跡部はいつだって言いたいこといってるでしょ」

「でも今日はまだ言ってねえし」

「言ったじゃん、あたしがウザいんでしょ」

「それとはまた別にだな」

「ウザいんでしょ」



跡部から言われた言葉は本当にわたしの心を傷つけたので、いやみたっぷりに2回繰り返して言ってやった。つくづくわたしも嫌な女だな(てか本気でウザいかもな、うん)


「大体今日のお前偉そうなんだよ」

「それよか、跡部の言いたいことって、何?」



跡部は、自分の言葉がわたしに流されたのが大変不服だったらしく、ますます眉が釣り上がった。でもこれでいい。いつものわたしだったら有りえないけれど、今のわたしは明らかに跡部のことを挑発していた。煽っていた。


そして跡部を怒らせて、わたしは跡部に酷いことを言われることを確かに望んでいた。異常だとは思うけれど、でも隠しようのない事実。こてんぱんに言われなきゃ、もう、起き上がれないくらいに傷つけてくれなきゃ、わたしは跡部から離れることが出来ないのだ。残念なことに。





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