かけひきのジャッジメント







ほら、わたしって別に悪女って訳でもないでしょう。だから、苦手なんですよ。自分の話にさり気なくウソを、ちりばめるのは。








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ほんとうはもっと気合いを入れておしゃれしたいんだよね。でもそんなことしたら、跡部に頭からつま先までジロジロと見つめられたあげく、「なに部員に色目つかってんだ、バカが。さっさ仕事しろ」と言われるのがオチだろう。


だから、やらない。


(決して長太郎への愛がすくないとか。そんなんじゃない)(てゆーか跡部どうにかなんないのかよ)




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、お前さあ。その鼻声どうにかなんねーの?」

「し、しょうがないじゃん・・・・・」

「部員に風邪うつしたらタダじゃおかねーかんな」

「はいはい」




風邪気味のわたしをいたわるゼロ(もしくはマイナス1くらい)の跡部の言葉にめげることなく、わたしは働き続けようとするのだけど、やはり風邪をひいているので、どーもテキパキ仕事をこなすのは無理らしかった。当然、体調不良なんて不手際の言いわけにならないので、何度も跡部に怒鳴られた。本日三度目の雷を跡部から食らったところでようやくわたしの異変に気付いた監督が、「はベンチで休んでおいてはどうかね。」といってくれ、やっとのことでベンチに腰掛けた。助けてもらっておいてなんだけど。監督、気付くのがちょっと遅すぎやしませんか。







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わたしはベンチにうずくまってコートを眺めた。いつもはこんな風にじっくりと練習風景をみる暇は無いので貴重な体験だ。そんなわけで、ちょっと長太郎のこと独占しすぎな宍戸にジェラシー感じちゃったりする夕暮れどきの乙女なのだ。もう一回言おう、わたしは乙女なのだ。普段そんなかわいいキャラじゃないから口にしないだけだ。自分の立場をわきまえているのだ。本当のところは今わたしは十分に恋に迷い悩んでいる。そしてたまに泣きたいくらい寂しくなったりする。


長太郎がわたしと口きいてくれるのはわたしがテニス部のマネージャーだからだ。それでもって、長太郎がわたしに優しいのはわたしが年上だからだ。実際に長太郎がわたしのことをどう思っているかなんて、そんなのわかりっこない。-----いつもこのことを考え出すとキリがなくて底なしに暗い気持ちになるのだった。



もしわたしに“駆け引き”の能力があったなら迷わず長太郎に使っていただろうね。ちょっと優しくしてみたり、ちょっと冷たくしてみたりして長太郎のわたしへの気持ちを測ってみるのだ。



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